君に夢中で恋してる*
膨らむ疑問。
聞かずにはいられなくて、思わず口を開いてしまった。
「椎名、さっきまで…何か見てたのか?」
「えっ…?」
パッと顔を上げた椎名を見ながら、窓の方を指差す。
すると、彼女の顔が赤く染まった。
「あっ、あの……景色を見てただけなの!昇降口から校門までの桜並木、今は鮮やかな緑で綺麗だなぁ…と思って。だから、気にしないで?」
身振り手振りでアタフタしながら説明をした椎名は、窓際の席に置いてあったカバンから教科書やノートを取り出す。
「えっと、せっかく日向君に来てもらったことだし、勉強を始めなくちゃ…だよね。」
「あ、ああ…。」
勉強の準備を始める姿に戸惑いつつ、俺は椎名の隣の席に腰を下ろした。
気にしないで、とは言われたけど…
質問した時の、あの表情。
ものすごく気になる。
それに、今も…話を強制的に終わらせたような感じだったし…。
もしかして、椎名が見ていたのは…
景色じゃなくて、下校していく生徒の誰か…だったりして…。