灯火-ともしび-
「重いよー?」

「大丈夫ですよ。だからどうぞ。」

「ごめんねぇー?」

「いいえ。」


会話は噛み合ってるけど、相変わらず目はとろんとしている。
俺が夏海さんに背を向けてしゃがむと、夏海さんは素直にすとんと乗ってきた。


「重いでしょー?」

「いいえ。変に気を遣って体重を外にやらないでくださいね。
ちゃんと掴まってください。」

「はぁい。」

「ぐぇ!」

「んー?」

「それは強すぎですよ!夏海さん!」

「ごめんごめんー。」


酔っている夏海さんはちょっと素直すぎる。
首、絞められかけた。


「じゃ、帰りますよ?」

「はーい。」


…やけにテンションが高い。


「ん?」


肩にちょっとだけ重みを感じた。
そう思って右肩を見やると、夏海さんの頭。
…どうやらまた眠ってしまったらしい。


「ケータイ、ケータイっと。」


俺は左腕で夏海さんを支え、右手でケータイを取りだした。
着歴の一番上に発信する。

< 13 / 85 >

この作品をシェア

pagetop