灯火-ともしび-
「しかも…なんで私が…あいつと…。」

「…あいつ?」

「風馬よ…。」

「え?お、れ…?」


不意に呼ばれた自分の名前。
…ちょっと意味が分からない。


「…別にあいつだって…私の浴衣とか…見たいわけ…ないでしょ…んー…。」

「見たいですよ!」


っておい!大きな声出すなよ俺!
そうは思ったものの、見たいに決まってる。だからこそ反射みたいに声が出た。


「…本気…?」

「本気です!」


…あれ、会話噛み合ってる。
ど、どうしよ、これ。誘えば…もしかして一緒に行けるのか…燈祭り…。
よし、もうこれ、勢いで押せる気がする!


「…夏海さん。」

「…なぁに?」


うわ!また可愛い声でんなこと言って!
ぐっと自分の気持ちを抑えて冷静さを保ち、俺は言葉を続ける。





「…俺、夏海さんと一緒に燈祭り行きたいです。」





しばしの沈黙。
…寝たか、これ。




「…どーしても…って言うなら、いいよ。」

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