灯火-ともしび-
* * *


シャワーを終えて出ると洗濯機がまだ音を立てていた。風馬が回してくれたのだろう。
バスタオルを見やるとその上に着替えらしきものが置いてあった。
真っ白なワイシャツ。
…ん、ワイシャツ?


ま、まぁ、文句を言える立場ではない。
シャワーまで借りて、尚且つ洋服を借りる身だ。服の種類までいちいち何か言えるはずもない。


だが、一つだけ、私は文句を言っても良い気がする。





…下が、ない。
多分これは風馬のシャツなのだろう。私のものよりもかなり大きい。
だがしかし、私の身長と奴の身長は15センチほどしか変わらない。
つまり、奴のサイズで私がシャツだけというのは、そんじょそこらのミニスカートよりもミニな状態になる。…多分動けばパンツが丸見えだ。





バスルームと廊下を隔てるドアはややガラスの部分があり、そこには人影が見える。


「風馬。」

「はいぃっ!」

「…下がない。これではパンツが丸見え状態でとてもじゃないけれど風馬の前に出られない。
ジャージでもなんでもいいから下を貸して。」

「…シャツ、着てくれます?」

「上にはもちろん文句はつけない。下を用意して。」

「わ、分かりました!」


慌てて階段を駆け上がる風馬の足音が聞こえる。
…とりあえず着替えを済まそう。

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