ドライヴ〜密室の教習車〜
さよなら、運命
   〈1〉

 与田里子ちゃんは、私が電話をかけると若干驚いたようだったが、再びこの喫茶店に来てくれた。

 相変わらずお客さんのいない店内で、里子ちゃんは少し落ち着かない様子だった。

「……田中さん」

 不安げに私の名前を呼ぶ、里子ちゃん。


 里子ちゃん。


 これから私達は、一体彼女に何を話すつもりなんだろう。

 目の前のこの子を見ていると、決心が鈍りそうだ。


「与田さん。村上さんを殺した犯人がわかりました。それを、あなたにはぜひ伝えたくて」

 見かねてか、篠さんが口を開いた。

「えっ! 本当ですか?」
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