ドライヴ〜密室の教習車〜
   〈2〉

「だ、だって……さっきそう言ったじゃないですか。村上くんは、背中から出血したって」

「いいえ。《刃物による出血》としか言っていません。なぜあなたはそれが《背中》だと知っていたんですか?」

 里子ちゃんが肩を震わせる。

「……里子ちゃん。この喫茶店に、つい最近も来たんでしょ?……村上くんと一緒に。最近ずっと話してなかったって言ってたけど……その時は二人で何を話したの?」

 私はようやく、それを言えた。 

 でも、里子ちゃんは、私を見ない。
 自分の震える拳を、じっと見つめているフリをしている。
 今は、視線すら、自分でもコントロール出来ないようだ。

 私は、息を吸い込み、吐いた。


「……何の《作戦》を《実行》させようとしていたの?」
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