ドライヴ〜密室の教習車〜
   〈3〉

 意識しない、わけがない。


 あれだけ、弥生や文乃にあんなことを言われてしまうと、いくら私でも妙に緊張してしまう。

 すでに本日の教習は、二時間目まで終了してしまっている。

 と、いうことは。ですね。

 今、教習車に向かえば、例の探偵《篠敬太郎》という男がいるわけです。


『すごいかっこいい』?
『すごいかっこいい』??


 文乃が先程さらっと言っていた言葉が、今頃になって私の頭の中でリピートされる。

 私はなんとか冷静を装い、自分の担当車である22号車に近づく。

 車の窓から少しだけ見えた彼は、顔こそよく見えないが、背が高そうな男だった。

 無意識に、唾を飲み込む。

 そして、勢いよくドアを開け、運転席に乗り込んだ。



「こんにちは。はじめまして、田中です」
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