ドライヴ〜密室の教習車〜
 それでも気持ちが少し軽くなった私は、いつもの調子で教習を始める。

「じゃあ、教習原簿を貸してください」

 それを篠さんから受け取り、広げる。
 技能教習は配車表どおり三回目だ。

「前の教習が、実車は初めてだったんですよね。どうでした?」

「うーん。どうって……普通ですね」



 でた。


 この《普通》という言葉が一番アヤシイと、私は思っている。

 すごく上手いか。
 すごく下手か。

 大体このどちらかで、本当に普通だったケースはほとんどない。
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