ドライヴ〜密室の教習車〜
 この男、ちょっと読めないな。

 私は篠さんの表情を確認してみる。

 淡々とした口調どおりの、クールで尚且つとぼけた表情。



 私達指導員には、教習生の性格などを踏まえた上での教習が要求される。

 例えば、神経質な人は、小さな失敗を気にしやすく、自信もなくしやすい。
 そういう人の場合はあえて思い切って速度を出させ、それにどんどん慣らしていく。

 自分をかっこよく見せたがる人は、知ったかをしたり、言い訳がましいところもある。
 早い段階で、道路のルールや減速の必要性を強調することが大切である。

 ……といった具合だ。

 教習生にはあらかじめ《運転適性検査》を受けてもらい、教習原簿にはその結果が記号で書かれている。

 それを参考にするのはもちろんだが、やはり実際に話したり行動を見てみないと、それぞれの教習生に合わせた教習を行うことはできない。
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