ドライヴ〜密室の教習車〜
 ちなみに篠さんも、ネクタイはしていないがスーツ姿である。

 しかし、そんな隣の彼のことはすっかり忘れて、目の前の刑事に見とれていた。


「おまえがここにいるっていうことは、依頼を受けたのか? でも随分早いな」

 爽やかに笑いながら、探偵らしき男に話しかけているカレ。

「ああ。実は今、俺ここに通ってるんだ」

「あれ、おまえ免許持ってなかったの?」

「まあな。でも、この仕事柄あった方が便利だと思って」


 ……そりゃそうだろ。
 おせーよ、気づくの。
 今まで何で移動してたんだよ。
 チャリとかか?


「そうだよな。車はあったら便利だよな」

 私の心の中での下品なツッコミに対し、カレの言葉はなんて上品で優しいんだろう!

 もう、私はそんなカレに夢中になっていた。
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