ドライヴ〜密室の教習車〜
 篠さんのその真剣な顔は、先程までとは違い《仕事》をしている顔だ。

「うん、そうだ」

「だけど、おかしくないか。なんでわざわざ、背中から刺したりなんかしたのか」

「あ。そっか。村上くんは座席に座っていたわけだし」

 私はそう言いながらあることに気づき、思わず口に手を当てる。

「それに……しかも、シートベルトしてたじゃん!」



「なぎさん、気づいたな。……公史、ちょっと無理があるんじゃないか?」

「確かにそうだ。そのこともそうなんだけど、実は、いろいろと謎が多いんだ」

 公史さんが、自分の顎に右手を添える。
 その仕草もカッコイイです。

「でも、その謎は、どうせ教えてくれないんだろ?」

 篠さんは、皮肉っぽく笑ってみせた。

 私はそれになんかムカついた。
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