ドライヴ〜密室の教習車〜
   〈2〉

 公史さんに連れられ、私達は事件の起こった26号車の前に来た。

「敬太郎、触ったりするなよ」

「わかってるよ」

 運転席のドアは開いていた。

 まず、嫌でも手前の座席に目がいった。


「……血」

 私は眉をひそめ、目を細めた。


「なぎさん。あんまり無理すんな」

「いや、大丈夫!」

 本当は少し具合が悪くなりそうだったが、気合いを入れて力強く言った。

 篠さんも、それに気づいてくれているのか、それ以上は言わなかった。


「……やっぱり、結構な血だな」

 篠さんが目を凝らす。

 シートには、飛び散ったように血がついていた。
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