ドライヴ〜密室の教習車〜
   〈3〉

「田中」

 公史さんの姿がほとんど見えなくなった頃、ふと自分を呼ぶ声に反応する。

 その声の持ち主を予想しながら、振り返る。

 ゴツイ体格。
 少々大きめの頭。

 ……ああ。やっぱこの男か。

「藤田さん」

 藤田さんは、私に近づくと大きな溜息をついた。

「……マジで、大変なことになったなあ」

 彼は、太い指でポリポリと頭をかいた。

 短い髪の毛に、指の先っぽが少しだけ埋まっている。

「藤田さんも、事件があった時、教習してたの?」

 そう尋ねたとたん、彼は大きなリアクションを見せた。



「おおよ! なんてったって、オレは里卯の車の後ろにいたんだぜ」
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