ドライヴ〜密室の教習車〜
「ブレーキランプはついてても、急ブレーキとかはなかったの?」

 私の質問に、藤田さんは短く「ああ」とだけ答えた。

 改めて見ると、彼の顔はいつもより青い感じがした。

 いつもの赤っぽい肌の色が、今日の曇り空の下では、そう見えてしまっているのだろうか。



 ……いや、違うな。

 この筋肉男も、今感じているものは、私と何ら変わりはないのだろう。



「はぁ、まったく参ったな……。里卯のことが、本当に心配だよ」

 そうだね、と、出た言葉は、思っていたよりもとても小さくて。

 背の高い藤田さんには聞こえづらかったろうな、と思った。



「……あれ、田中。この人は?」
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