私の恋人は布団です。

「本当は,アナタ,何なの?ストーカーなら,もっと可愛い子にしなさいよ!」


 冷静に聞くと,論点がズレているような叱責であった。



「延さんは可愛いです……」



「だから……」

 延が呆れたように溜息を吐こうと息を吸った瞬間だった。

 ぼふっと大きな音を立てて,隆也の姿が見えなくなった。


 ベンチの上には,昨晩まで愛してやまなかった掛け布団が丸まっていた。


 丁度,絨毯を筒状に畳んだようにして,その布団はシクシクと泣き出した。


(どんなサプライズですか……!!タネは?仕掛けはっ!?何かのドッキリ……?私なんか使うより,リアクションの上手な芸人さんにしてよ……)


 延も泣き出しそうである。


 もしかして,周りの人間全てがグルなのでは無いか。


 延は疑心暗鬼になった。


「俺……ずっと,延さんと話したり,してみたくて……」


 さめざめと語る……布団。


「泣くこと無いでしょ……って言うか,何で布団になってるの……」


 延は,ベンチに座った。


「分かり……ません……」


「分かんないって……無責任な」
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