私の恋人は布団です。
「ママぁ,あのおねえちゃん,お布団と喋ってる〜」

 ふと気付くと,一組の親子が延たちを見ていた。

 小さい女の子は好奇の目で。

 母親は,怪訝そうな目で。

「しっ。見ちゃいけません」

 母親は子供の手を引いて,去っていった。

(もう……嫌……)





延は,その場を立ち去ろうとしたが,

「困るよ,お嬢ちゃん!粗大ゴミ置いて行っちゃ……」

 と,公園の掃除をしているオジサンに言われたので,布団を持ち帰ることになった。

 帰る途中も,何人変な目で見たことか。



 背中では,

「俺は……粗大ゴミですか……」

と,ウジウジ呟く……布団。



 挙句の果てに,母親には,

「アンタ……いくら布団が好きだからって……近所で悪い噂流れるから,布団を持ち出すのは止めなさい」

 と散々説教された。


 やっと母親から開放された後,延は,重い足取りで階段を上っていった。


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