私の恋人は布団です。

 延は,掛け布団を乱暴に押入れに突っ込んだ。

 抜け目無くタオルケットを引っ張り出し,ベッドに思い切り倒れこむ。

 まだ冬ではないとは言え,夜は寒くなる。

 加えて,延は筋金入りの冷え性である。


(つ,疲れた……もう無理……色々無理……)

 顔をシーツに沈めて,首をいやいやと振った。

 まず,朝。

 最悪の目覚めだった。

 そして,学校。

 あんなに恥ずかしい思いをするのは初めてだった。

 延は,ぐるぐると思考を廻らせて,そのまま寝てしまった。




 延が起きた時,もう夜はとっぷりと暮れていた。

 空腹のままキッチンに行くと,ラップを掛けられた炒飯があった。

 延は,それを電子レンジで暖めて,自分の部屋まで持っていった。


 部屋は,静まり返っている。


 掛け布団がベッドにないことだけを見れば,いつも通りの自分の部屋である。

 延は,ベッドに座って,レンゲで炒飯をすくった。
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