私の恋人は布団です。
その時の加南子は,驚くというより面白そうなものを見る目をしていた。
(変な目で見られるよりはいいけど……)
「それで?どうなの,布団君」
加南子の言い方だと,まるで自分が男の人を布団代わりにしていると思われそうで嫌だったが,この際どうでもよかった。
兎に角,延の発散の矛先は今のところ親友の加南子しか居ないのだから。
「押入れに入れといた。……今度,出たら縄で縛るって言っといたから,多分大丈夫だと思う」
延はどんよりとした溜息を吐きながら言った。
「可哀想に。あの子,カッコイイじゃない」
「カナまであの貌に騙されてるし。もう…私に味方は居ないのね……」
延は図書室の窓から虚しい気持ちで空を見上げた。
「どうしたの?延ちゃんの味方なら此処にちゃんと居るよ?」
難しそうな本を持ちながら微笑む天上人。
ではなく,佐上修一。
(他の人に言われたらクサイけど,先輩なら許せるって不思議だわ……)