私の恋人は布団です。
その日の夜,延は隆也に正座するように言った。
「いい?私は今夜から客用の掛け布団を使うから。それと,ずっと布団で居なさい。喋っちゃダメ!」
隆也は背を丸くして話を聞いていた。
「どうしてですか?」
「どうしてって……落ち着かないからに決まっているでしょう?」
朝起きたら,男に抱き締められていたり。
しかもその男は自分を“大好き”だと言う。
誰が落ち着けよう……。
「……でも……」
「でも,じゃないの!」
延が強く言うと,隆也はしょんぼりした。
「…………」
そして,シュウシュウと音をたてながら布団に変わっていった。
部屋の片隅に移動して,またシクシクと泣き出す。
(また面倒なことになったなぁ……)