私の恋人は布団です。
延は差し出された飲み物を口に含んだ。
(これが神託を伝える神様……コレが)
延の目の前に居る“コレ”は,
「そうだよ?皆こんなモンだし」
と,今にでも口笛を吹きそうな面持ちである。
「今時さぁ、仙人みたいな神様が出てきてもサ,誰も聞く耳持たないでしょ?だから、相手の相談を受けつつ、さりげなぁく神託を伝えちゃうのがイチバンなんだよねぇ……」
世知辛い世の中とはよく言ったものだが,何もそこまで現代風にしなくても,と延は思った。
「それで何か悩みとかある?お兄さんが何でも聞いてあげちゃう」
急に,キリっとした顔つきを作ったようだった。
「そうですか……それじゃあ」
延はおもむろにグラスを置く。
アキラと名乗った枕神は、目を輝かせている。
「ウンウン」
「あの布団引き取ってくれませんか。ついでにアナタも何処か行って下さい」