私の恋人は布団です。
延は壁に背中をぶつけた。
あまりの衝撃に,そのまま力が抜けてしまう。
ずるずると壁に背中を凭れながら落ちていく。
(私,こんな人知らない……!)
その青年は,長身だった。
歳は,延と同じ位だろう。
いや,もしかしたら少し下なのかもしれない。
整った顔立ち。
暖か味のある切れ長の目。
声は,少し低かった。
その青年は,一般的なレベルを超えた,俗に言う“イイオトコ”だった。
学校や街で見かけたなら,恐らくは惹かれていただろう。
しかしそれは,“学校や街で”ならである。
朝起きた自分を熱い視線で眺めていたり,いきなり抱き締めてくるような男ならば話は別である。
「ア,アンタ……何?誰?警察?こういう時は……そう,110番よ!」