私の恋人は布団です。
「布団じゃないときは人間だよ。ちゃーんと感情はあるし。その証拠に,アイツは直ぐ泣くデショ。悲しい時は,延ちゃんと同じ人間だからねぇ。悲しいよ?」
アキラの予期せぬ言葉に延は戸惑ってしまった。
布団が感情もある人間になるだなんて,信じられない。
(でも,あの布団……泣くし……あからさまに傷付くし……うぅん!でも,そんな事……)
「……元々は,布団でしょう」
延は居た堪れなくなって,アキラから顔を逸らした。
「まぁ。そうなんだけどねー」
それまでの空気を蹴破る様にして,アキラは気の抜けた声で言いいながら延の方に身を寄せる。
「……ちょっ……」
余裕の微笑みで延を怯ませてから,矢継早に真剣な眼差しを向ける。
「所詮,夢は,夢。……だからさァ」
「はい?」
「どうしたって現実には勝てないんだ」
枕神と名乗る男は,少しだけ哀しそうに笑った。
延は急に視界が白くぼやけていくのを感じた。
「だから,俺は見てみたいんだよねぇ……夢みたいな馬鹿な願いが叶うのを,さ」