私の恋人は布団です。
手帳を開いたまま動かない隆也に,修一は優しく微笑んだ。
「俺にバレたら,延ちゃんに怒られちゃうね」
「…………」
隆也の頭の中では,燃やされていく布団が何度もリフレインされていた。
「その様子じゃ,彼氏って訳でも無さそうだし……」
「そんな……恐れ多いです……俺,最近……延さんに嫌われていますから……」
「延ちゃんに黙ってて欲しいなら,本当の事を話してもらわなくちゃ」
「黙っててくれるんですか!?」
「説明してくれるよね?」
既に,隆也に選択の余地は無かった。
隆也は何度も心の中で延に謝りながら,修一に今までのことを話した。
「物凄く非科学的な話だなぁ……」
「……済みません」
「つまり,君は……本当は延ちゃんの掛け布団って事なんだね?」
「……はい」
「それで,延ちゃんが好きで一緒に居たい,と」
「はい!」
「そっか。ふぅん……」
修一の眼鏡のフレームがキラリと光る。
「伊達眼鏡って,俺……嫌いなんだよな」
「……はい?」