私の恋人は布団です。
「だから。伊達眼鏡。度数の入ってないお洒落眼鏡ってやつ」
爽やかな口元が,小さく歪む。
「は,はぁ……」
「……装飾だけなら,要らなくない?」
「そう,なんですか?」
隆也は修一の意図を計りかねて,曖昧に答えた。
「……まぁ,気にしないで。それより,隆也君」
「は,はい」
「延ちゃんにも自分のことを好きになって欲しいんでしょ?」
「それは……そう,ですけど」
「その為には,延ちゃんの好みの男にならないとね」
「でも,俺,延さんの好みを知らないので……」
「俺は知ってるよ」
ぴしゃりと隆也の弱音を叩くようにして修一は言った。
「だって,小さい頃から,ずっと見てきてるからね」
端整な顔立ちがいっそう引き立つような笑みを浮かべる。
「教えて下さい!」
「うん,いいよ。じゃあ,特訓だね」
修一は隆也に,放課後は生徒会の仕事を手伝うように言った。
そうして,修一の思惑通り,奇妙な隆也改造計画が始まったのであった。