私の恋人は布団です。

 延の心配を他所に,隆也は特訓と称して呈示される雑用をこなしていた。


 つまり,まんまと騙されていた。


(……コレが,特訓……)


「あ,隆也君」

「はい」

「これ,今日の分ね」

 手渡されたのは,何やら胡散臭い雑誌だった。

 タイトルには,

『此れで貴方もイイオトコ!タイプ別の恋テク完全網羅!』

 と書かれてある。


「全部読んどいてね。明日テストするから。俺は帰るけど,掃除と戸締り宜しく」


「え?……あ,はい!」


 修一は,完全に自分を信用する隆也を後にして生徒会室を出た。


(……あんな本くらいで恋愛が成就する訳無いだろ)


 靴は履き替えながら,修一は不穏に口元だけで笑った。
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