私の恋人は布団です。

 隆也が帰って来た時,延は机にうつ伏せになり,テキストを枕にして寝ていた。


(むやみに延さんに触らない……むやみに延さんに触らない……)


 隆也はプルプルと震える手で,机の方を見ないようにしながら延の背中にタオルケットを掛ける。


(本当は……俺を使って欲しいけど……そうすると,触っちゃうし……)


(いや,でも……このままじゃ延さんが風邪引くかもしれないし……ベッドに運ぶくらいなら延さんだって許してくれ……)


「燃やすわよ……」


 隆也の肩が恐怖のあまりビクリと上がる。


「……んぅ……」


(……ね,寝言か!……ビックリした……)


(延さんは冷え性だしな。この人が風邪引く位なら,俺が燃やされる方が良いや)



 隆也は覚悟を決めて,延を机から抱え上げ,ベッドに運んだ。



(……俺,頑張りますから)



「……粗大ゴミかな……燃えるゴミ……」



(…………)



 延の寝言に肝を冷やしつつ,隆也は大人しく押入れに入った。
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