私の恋人は布団です。
「大体,人間としてちゃんとやってけるのかも微妙だし……」
どうやら,彼女の本音はそれらしい。
「心配なのね」
「え,あ……それは,まぁ……。あんなのを相手にしていたら,普通の神経の持ち主だったら胃が荒れるわ」
「ねぇ」
加南子は含みのある,撫でるような声音で延を見た。
「“好意の返報性”知ってる?好意を表してくれた相手には,少なからずその相手に好意を持つんだって」
「……だから?」
「個人差はあるみたいだけど……。あれだけ好意向けられたら,すこしは好きになったりしないの?」
「しないわ」
それは,加南子が思うよりもきっぱりとした答えだった。
「……アイツのスキは挨拶程度だもの。一々本気にしていたら,心臓持たない」
(……何だ。少しはあるじゃない,返報性)
加南子は思った言葉を飲み込んで,微笑んだ。