私の恋人は布団です。
「……っひ,ぁ……くしゅっ!!」


(最近,本当に寒くなったわね……)


 延は肩を少し震わせて,パジャマの上からバスタオルを羽織った。


(大体,掛け布団が無い所為なんだけど……)


 正確には“ある”のだが,延の選択肢には“無い”のである。


「はぁ……」


 延は,もう遥か遠くの記憶を思い出すかのような目をした。

 本来ならば,風呂場から部屋までの移動で冷えた指先や足を暖めてくれる布団が自分の部屋のベッドの上にあった筈だ。

 そして,滑らかな布の感触に包まれながら心地よい気分で眠りにつく。

 朝は,その掛け布団が放してくれないと錯覚するほどの引力で起きる事が嫌になる位だった。


(まさか,布団の時にも意識ってあったのかしら……そうだとしたら,何か複雑……)

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