私の恋人は布団です。
延は色々と考え過ぎて,いつもならパジャマの袖口を伸ばして触れる筈の冷たいドアノブを素手で掴んでしまった。
部屋に入って,延は自分の目を疑った。
隅にあるベッドの上は延の理想的な状態だったからだ。
ふかふかの,それでいて柔らか過ぎない低反発枕。
清潔そうなガーゼのシーツは,恐らく母親が変えてくれたのだろう。
そして,お誂え向きにベッドに被さる掛け布団。
あのシーツと掛け布団の間の温度は,きっと柔らかくて温かいだろう。
しかも,掛け布団はピクリとも動かない。
(今までのことは,お風呂で見た夢かも……!!)