私の恋人は布団です。
「どーでもいいじゃない。人じゃないなら,どうなったって」

 アキラは自嘲じみた顔をしていた。

 澄んだ空気が冷たい。

 幾重にも重ねられた冷えた空気の層が厚い。

 鞄が重たい。

 動けなくなる。

「違った?ゴメンネ。そう聞こえたから」

(人じゃないから?違う。もし,“お伽噺みたいに動物が人間になった”とかいう展開だったら。もっと。……違う。どうして布団だったの。布団じゃなかったら。せめて)

「動物だったら,よかったのに?」

「……勝手に続けないで下さい」

「動物なら,好きになれてたのに?」

 耳に馴染む声だった。









「動物じゃなくても」













「好きになっちゃうから,困るんです」



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