私の恋人は布団です。
「ふ……」
延の肩が震えた。
息を飲む音が喉で鳴る。
肺に息を深く深く吸い込んだ。
「布団がふっとんだーッ!!!」
生まれて初めての絶叫だった。
「……っ、はぁ、…」
何も変わらない。
母親の小言が下から響いたくらいだった。
(……やっぱり、騙された……っ……)
一気に力が抜けて、ベッドに体が埋まる。
兎に角、何かにすがりたかった。
それが例え怪しい神であったとしても。
文句を言うにしても、何処からも、あの軽口は聞こえない。
延は、自分が見放されたのだと思った。
いつまでも臆病で前に進まない自分に、神様は呆れたのかもしれない。
(腐っても神様だし……)
心の中で悪態を吐いて笑おうとしてみても、鳴咽が止まらない。
じんわりと胸が痛い。
鼻の奥が痺れて、歯を食い縛る。