野良神様の32分間
黙ってしまった季柚を見た『堕ち神』は、「やれやれ」と言ってため息を吐いた。
「人間と言う生き物は、誰にでも情が湧くのか?」
「・・・どう言う意味よ」
「前の主は、私が昔の話をすると凄く悲しんで、私が怪我をすると凄く心配した。自分じゃない、誰かのために一生懸命な人間だったんだ」
(知ってる。私もそんなお人好しを・・・)
人を信じ、愛した、私の母。
あれ程のお人好しが、この世界のどこにいるだろうか。
自分に笑いかけてくれたのも、愛してくれたのも、この世界で貴女だけだった。
お母さん、貴女だけだったの。
ねぇ、お母さん。
貴女が今も生きていたなら、私はこの世界を、きっと好きでいられたかな。
ごめんね。
お母さんが愛したものを、私は恨んでしまいました。