野良神様の32分間
「────い、おい!」
「っ!」
「・・・・はぁ。黙りこくって、一瞬立ったまま寝てるかと思ったぞ」
「心配そこ?私、そんな器用じゃないから。・・・・そろそろ帰る。夕方っぽいし、お腹空いたし」
空の色はいつの間にか、鮮やかな茜色になっていた。季柚が携帯で時間を確認すると、既に5時半を過ぎていた。
「そうだな。今日の夕飯は何だ?」
「知らない。家の人とあまり話さないから」
「そうなのか?ま、今の俺は腹ぺこだからな。何でも腹に入る」
「・・・・・・・ちょっと待って。何ついて来てんのよ。貴方もお家に帰んなさい」
「生憎、俺は『堕ち神』。帰る場所などない。それにお前はもう、俺の主になった」
「何勝手に決めてんの。ふざけないで。こんな生意気な野良猫拾った覚えないから」
「猫じゃない!神だ」
「野良ってのは否定しないのね・・・。んじゃ、その野良神様を拾った覚えはございませんので、どうぞ他を当たってください」
丁重に断る季柚だが、向こうも意志は変わらぬようで、『堕ち神』は季柚の腕に飛び乗り、絶対に離すまいと必死にしがみついた。
季柚は引き剥がそうと、思いっきり引っぱったりするが離れず。むしろ逆効果で、しがみつく力によって季柚の腕の肉がつねられてた。
「痛っ!痛たたた!!離しなさいよ!!」
「ならば、お前が私の主と認めろ!」
「それは嫌!!断固拒否!!と言うか、さっきの流れのどこで私が貴方の主になったって言うのよ!!」
「俺とお前が出会った瞬間、とでも言っておこうか☆」
「・・・グーで殴るわよ」