野良神様の32分間



必死の攻防の末、最後まで粘った季柚が勝ち、『堕ち神』は負けた。
季柚は神社を出るまで、「後で後悔する」だの「絶対に助けてやらんからな」だの言われたが、負け犬の遠吠えだと思い、別段怒鳴ることもなくその場を去った。


(あ・・・・でも神様だから、神の遠吠え?うわ、どうでもいい)





夏の日が長いおかげで、帰り道はやや明るい。

季柚は途中で罪悪感を感じたが、首を左右に振り、自分を肯定した。


「あれは幻、あれは夢、だから私は悪くない・・・」


ぶつぶつと言いながら歩いていると、急に強い風が吹いた。それと同時に激しい頭痛と耳鳴りがする。
季柚は立っていることができず、そのまま道端に倒れるように膝をついた。


「───か?」


後ろから声が聞こえたような気がして振り返ると、そこには長身の男が心配そうな表情でこちらを見ていた。
何か言っているようだが、頭痛と耳鳴りで今はそれどころではなかった。



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