【短編】僕の名はインフィニティ
「彼はもうこの世にいないから。」


僕はキミの方を見る。

キミは泣いている。


「毎月、3日に彼は航海から帰ってくるの。たくさんの異国のお土産を抱えて。」

キミの涙を頬で擦り取る。

「あたしは、庭先で彼を待つ。彼の姿を早く見つけたいから。」

もう言わないでいいよ。

僕がいけなかった。

「だけど、ある日。彼は帰ってこなかった。」

キミの胸が傷むように、僕の胸も傷む。

「代わりに一本の電話が・・・彼の船は転覆して彼は亡くなりましたって。」

キミは声をあげて泣いた。

僕はただ傍でキミの声を聞いていた。


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