カタチのないセカイの為に
『火の無いところに煙は立たぬ』を
忘れていたわ。

理子は、優潤ペースに乗せられていた事に、
やっと気付いた。


「でも、それは中学の最悪な噂とは、別よね。
美咲の中学校生活も、戻ってこないけど、

あなたの、中等部の生活も戻ってこないし、
訂正することも不可能よ。」


強い口調で言った理子の言葉に、
優潤は、ストローをクルクルと回しながら、
仕方なく話を始めた。

「俺、昔から『みさちゃん』が好きだったろ。
でも、俺が母さんに聞く以前に
穂坂家でも、俺の両親が『大切な友人』だって、必死で探していたんだよ。

でも、見つからなくてさぁ…。

俺が、諦めていた時に、
亜里沙(アリサ)に言われたんだ。」


「亜里沙?」



「うん。 ほら、中等部の時、
校門の前に車で来た人いたじゃん。」

「あぁ。あの、『イイ女』って噂だった人?」

「そうそう。いや。
『イイ女』かは、別だけど…」
優潤は、苦しそうに笑っていた。


一番初めに、優潤と噂された人。

理子だって忘れる訳が無い噂の人物。




< 107 / 248 >

この作品をシェア

pagetop