カタチのないセカイの為に

優潤は、ストローをクルクルと回しながら、
アイスティーを見つめる。

理子は、最悪な噂話を思い出した。
「なるほどね。
だから、優潤を好きになったら、
『振られる』なんて、言われていたのね。」

優潤が、コクリと肯くと、頬杖を突いた。

「噂話は、俺の耳にも入ってきたよ。
健吾は、エスカレートする噂を、
始めは、面白可笑しく楽しんでたけど、

『もぅ限界だろ、そろそろ止めに入るぞ。』って
言うし…。
でも、断った。」

真剣に話す優潤の姿に、
理子も、
いつの間にか親身に聞き入っていた。

理子は、クルクルとストローを回した。
「広報部の新聞も、酷かったわよ。

好き勝手に新聞書いて…。
それを知っていて、止めなかったの?」

優潤は寂しそうに肯く。

「人の気持ちを弄んでた俺に、
罰を与えてくれる存在が、
欲しかったのかも知れない。」

理子は、眼を瞑って額に手を当てた。

そんな罰は、自己満足でしかない。

でも、その気持ちが解らない訳でもない。




優潤が5歳の頃の夏。

初めて会ったばかりの優潤に、
理子は、自分と同じだと感じた。
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