カタチのないセカイの為に

いや。同じと言うよりは、
『似ている部分があった。』の方が
近いかも知れない。

自分以上に優潤には、
子供らしさの欠片も無かったはずだ。


『みさちゃん』と会わなければ、
無かったかも知れない感情を持った。

言われた事を、
ただ、ただ、こなしていた日々。

好きも、嫌いも解らなくて…。

『楽しい』という感情さえ解らなかった。

それは、今だから解ること。
私達にとって、『みさちゃん』は、
大きな、存在だった。





(昔の話)

穂坂家の庭と繋がっている砂浜で
遊んでいた三人を美咲の父が呼んだ。

「りぃちゃーん。みさちゃーん。帰るぞー。
ゆうくんも、お部屋に帰るぞー。」

近寄ってきた。父に、美咲は『ツン』として、
「やだ!もっと遊ぶ。」
と言った。

理子も勿論、もっと遊んでいたかった。
でも、『やだ!』なんて、否定的な言葉は、
使ったことが無かった。

この時初めて、
『やだ!』の、言葉と使い方と
『やだ!』の、感情を知った。

美咲のツンとした態度に、
美咲の父に、困った顔をした。

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