カタチのないセカイの為に
「美咲ぁ。早くぅ。」
理子に呼ばれて振り向く。

塀の外にいるのは、
忠君と私だけ…。

「ごめん。今行く。」

門と塀の間に足を掛けて、よじ登る。

登ったところで、塀の中を見渡す。


木が多くて、ここから中は良く見えない。


「おいで。」

声がする下の方へ、目線をずらすと、
優潤が、手を差し伸べて待っている。

健吾も待機している。


数日前も、そうだった。

「何か、懐かしいね。」


美咲が、優潤の差し出された片手に、
自分の手を掛け降りようとした。


支えてくれるはずの優潤が、
『お。わぁ。』
コケタ…。

待機していたはずの健吾は、
「ハハハハ。ちゃんと、支えてやれよ。
優、ダッセェ。ハハハハ…。」
笑って、見ているだけだった。


「ご・ごめん…。」
慌てて、退こうとする美咲が
優潤と握っていた片手を放すと

ペチャンコになっている優潤が、
声を掛けた。


「大丈夫だった?」
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