カタチのないセカイの為に
「何だよ。キモイなぁ。」
健吾の頬が引きつっている。

「美咲がさぁ。『優潤』って言ったんだよ♪♪
さっき、コケタ時に、
『優潤は、大丈夫?』って♪

たまには、コケルのもいいもんだな♪♪」


優潤の声は、ルンルンしている。


健吾は、肩に回された手を払い除けると、
微笑して、言った。

「世の中でお前の事、優潤って呼ぶ奴、
俺、メチャメチャ知ってるぜ。
『ゆうーじゅん♪』 」


茶目っ気交じり健吾の声。


優潤が、両手を胸に当てる。

「お前が言うと、サムイナ…。
可愛く言っても、お前、全然可愛くないぞ。」

「優は、結構、冷たい奴だなぁ…。
名前で、呼べって話だろぅ?
『ゆうーじゅん♪』 」

健吾は、もう一度、茶目っ気声を出す。


「違うよ…。
呼び方が嬉しいんじゃ無くて、
美咲に呼ばれた事が、嬉しいじゃん♪」


健吾が頭の後ろで、両手を組んだ。
「あぁ。ハイハイ。
良かったなぁ。 お前、単細胞で…。」

「健吾よりも、俺、成績いいぞ。」


健吾は、『はぁ』と溜息をついた。

「名前の呼び方で、そんなに嬉しいか?」


「だから、違うって…。何でもいいんだよ。
あだ名でも、名字でも、フルネームでも、
俺が振り向く、名詞だったら。」
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