カタチのないセカイの為に
辺りをキョロキョロと見回す美咲。

理子は、別荘と庭を繋げる階段に座って
庭を眺めた。

頭の中に、昔の記憶が過ぎった。
「昔、ここで、いっしょ…」


『ボァン!!』


途中まで言い掛けると、大きな音で言葉が消された。


大きな音と共に、庭が一気に明るくなった。

その時、初めて夕日が少しだけ
沈みかけている事に気付いた。

美咲が、理子の方を向いた。

「ごめん。聞こえなかった。 何?」
聞こえなかった言葉を尋ねる美咲。

「何でもないわ。」

理子は、『あの時』出会えた事を
感謝するように、微笑んだ。


『あの時』と変わらない南国を感じさせる庭。


一定のテンポを保ちながら聞こえてくる
波の音。

時折、肌に感じる生暖かい風。


『あの時』と変わらない。




『あの時』理子の母が問いかけた日と…。

「りぃちゃんは? 楽しかった?」


初めて、『楽しい』という言葉を知った。

『楽しい』と感じた日。



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