カタチのないセカイの為に
優潤は、焦った。


悲鳴と共に切れてしまった携帯電話…。


何かあったのだろうか。

それとも、電源の弱い場所…。


優潤は、また電話を掛ける。

『…電波の届かない…
…電源が……ない為……』



危険な場所は把握していたが、
電源の入らない場所までは、把握していない。



さっきの悲鳴…。


『ぎゃああああああ。』と叫んだ美咲の悲鳴が、
頭の中を駆け巡る。



もしかしたら、工事中の掘っている穴に
落ちたのかも知れない。

もし、工事中の穴に落ちていたら、
簡単には助けられない。


その位、穴は深いし、大きい…。



考えれば考えるほど、

悪い方向に考えてしまう。


血の気が引いた顔で健吾の方を向いた。



優潤の顔を見た健吾は、
困った表情を浮かべた。

優潤が、抜け殻のようになっている…。


「おい。お前 大丈夫か?
探しに行くぞ。
早くしないと、もう直ぐ暗くなるそ。」



『もう直ぐ暗くなるぞ。』

健吾の言葉に優潤は我に返る。

こんな事をしている場合じゃない。

美咲に悲鳴を上げるほどの何かがあった。



優潤と健吾は顔を見合わせると、
ゴミ捨て場の方へ走った。





『ワオォォォォォォン!!』
その時、野犬の遠吠えが聞こえた。


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