カタチのないセカイの為に
「すみませーん。」

美咲と理子はお客さんの声に反応し、同時に振り向いた。

「こっちこっち!」
お客さんが呼んでいる。
理子は、サッと一歩前に出たかと思うと
「あっ私が、行くわ。」と、言っていつもと変わらずに、自然に声のする方へ向かった。

美咲は、また呼び込みを始めた。

「お姉さん。こっちこっち。」
理子は、手を振っていたお客さんの所に着き、オーダーを取り始めた。
「生ビール3つと枝豆と焼きそば3つと、おでんを1つですね」
確認すると、
「枝豆もう一個追加でぇ」と言われ、
「はい。」と返事を返し、
「少々、お待ちください。」と告げて、歩き出す。
厨房の人にオーダーをお願いした。
生ビールをジョッキに注ぎながら、美咲の方に、眼を向けると、『実演トーク調』になっている。

理子は、呟いているように『フフッ』と笑った。
その時だった。注いでいるビールが、

『ゴボッッ。ゴボゴボッ。。』
理子は慌てて、レバーを戻す。
通り掛った店長が、気付いたらしく、
「ビールタンク無くなったんだね。今日はビールが良く出るなぁ。」
と言いながら、タンクを換えてくれた。

「ありがとうございます。」
理子がお礼を言うと、店長はにっこりと笑顔を返し厨房に入っていた。

ビールの続き続き・・・。

また、生ビールを注ぎ始める……。
また、美咲の方に眼を向ける。


美咲は、二人の男の人に話しかけられていた。今にも喧嘩しそうな顔つきだった。
理子は、心配だった。

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