カタチのないセカイの為に
石積みから落ちたからって、
そんなに遠くに行っているはずが無い。


必ず、近くにあるはずなのに、
見つからない…。


掻き分けた草が、傷口に当たっているからか、それとも、出来たばかりの傷だからか、

ピリピリ、ヒリヒリ、傷がしみる。


捻った右腕も、痛い。



『ワオォォォォォォン!!』

野犬の遠吠えが聞こえる。



美咲の身体の中に『びりびりびり』と、

まるで雷の光のような速さで、

突然、震えが走った。



ここ、暗い…。


『ワオォォォォォォン!!』

野犬の声が近づいている。


恐い…。


コワイ…。



冷や汗が流れてくる。


恐い……。



既に、好奇心は無くなり恐怖に変わっていた。



見当たらない携帯電話を諦めて、

ここから立ち去ることにした。



石積みの前に立つ。

肩より低い位置まである石積みの高さは、
頑張ってやっと登れる高さだ。


石積みの上に両手を付いた。




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