カタチのないセカイの為に
美咲の携帯電話が、
木の根の影に落ちていた。


携帯電話の本体の隣には、
落ちた衝撃で外れてしまったのだろう。
電池パックがあった。


携帯と電池パックを拾う。


『ワオォォォォォォン!!』

野犬の遠吠えが、また聞こえた。



さっきより、確実に近づいてきている。

近くの草が、ザワザワ音を立てて揺れた。

美咲は、音の方を『ハッ』と振り向く。


『何かいる。』


伸びた草の中から、動物の気配を感じる。


『何かいる。
まさか…!! 野犬?!』


美咲は、充電パックを携帯に差し込む。

『壊れてたら、どうしよう…。』
そう思いながら、
直ぐに携帯の電源を入れた。




『ラララ…ララ…ラララ♪♪♪』

電源が入ると、美咲が電話を掛ける前に

美咲の携帯の着信音がなった。


『ピッ』


通話マークを押す。
「もしもし。」

電話のスピーカーから、優潤の声が聞こえる。

『もしもし?今、何処?』


落ち着きを失くしている美咲は、

優潤の質問に応えるより先に、



何故か眼から、涙が溢れた。


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