カタチのないセカイの為に
注ぎ終えた、生ビールを右手に二つ。左手に一つを持つ。
美咲の方見る…。
まだ、なにやら話をしている。
美咲は、困った顔つきになっている…
生ビールをお客さんのテーブルに置いて、今度は厨房のカウンターへ行く。
ビールが運び終わると同時に、二皿の枝豆が出来あがったからだ。
理子が、枝豆をテーブルに置くと、
座っていた『お客様』が、普通より少し大きな声で言った。
「このビール、味がねぇんだけど……。」
その声で、初めて理子の眼に
『お客様』の顔が視界に入る。
「申し訳ありません。」理子が謝罪する。
それに気付いた店長は新しい生ビールを持って来た。そして一緒に頭を下げてくれた。
『お客様』は、
「まぁいいや。
デートしてくれたら許すから。」言い放った。
「それはチョット…。」と店長が口を挟む。
「アメリカン・ジョークだよ。」
思いっきり日本人顔をした金髪の兄さんが言った。
そして、その場は直ぐに、収まった。
その後、店長が厨房に向かっていくと、
謝る為に、理子も店長の後を追っていった。
店長は、
「生ビールのタンクを換えた時は、必ず一杯目は捨ててね。」と注意をしたあと、
「別に悪い人じゃないみたいだし、客も少なくなってきたから、今のうちにご飯食たべな。
あの子達も、来ているし…。」
言葉を止めると、さっきの客の方向を見た。
「念の為に、一緒に食べるんだよ。」
と、笑顔で告げた。
理子が厨房から出てくると、
「ご飯を食べよう」と言った。