カタチのないセカイの為に
優潤は、振り払う美咲の手を
眼を真ん丸にして見詰めた。


「何?どうした?」



美咲が、優潤に差し出したはずの、
左手首を右手で押さえている。

「痛い?」

美咲の顔は、苦い物を食べたような顔だ。

「手首、痛いの? 怪我した?」

優潤の問いに、美咲はコクリと肯く。

「石垣から落ちた時に、捻ったみたい…。」


美咲が、右手で握り締めている左手を

優潤は、確認するように触る。



明らかに、温度の違う場所がある。熱い。



「ここ? 痛い?」

「うん…。」

優潤が持っていた懐中電灯で
左手首を照らす。

少し、赤く腫れている。


「待って!!何!? ここだけじゃないよ!!
肘も、膝も、傷だらけじゃん…。」

優潤はびっくりした。

まさか、美咲がこんなに怪我をしていると
思わなかった…。


「石積みから、落ちたか…。」

優潤が、呟いた。


美咲は、優潤の呟きに返答する。
「うん。 落ちた…。」


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