カタチのないセカイの為に
優潤は、
美咲の怪我をしていない右手を掴んで、
歩き出した。
美咲は、不思議だった。
今までなら、手を掴まれたりしたら、
叫び出していた。
でも、不意に手を掴まれたのに、
今は、叫んだりしない。
むしろ、
掴まれる手にドキドキしていた…。
美咲は、男の人がコワイ…。
美咲にとって、
優潤は例外になった。
そして、
男の人と話が出来るのは、成長でもある。
美咲の中で
『優潤は、コワクナイ人』。
『優潤は、スキナ人』と認識した。
この人が好きだと本気で思った。
『海の家』で会った時、
始めは、苦手な人だった。
でも、毎日のように『海の家』に来て、
ボーッとして何が楽しいのか解らない彼が、
時たま、笑顔になったり、
時たま、真剣な顔をしたり、
時たま、ムスッとしたりしているのが、
楽しかった。
『海の家』には、
今でも、何をしに来ていたのか理解不能。
でも、少しずつ話をするようになって、
いつの間にか、凄く身近な存在になっていた。
一週間だけだけど、
一緒に生活していたからかも知れない。