カタチのないセカイの為に
その時、
忠君の眼を盗むかのように、
理子と健吾の間に在る手と手は、
しっかり繋がれていた。
「そうだよな。」
理子は、空を見上げた。
「もう。暗いのに、まだかしらね。」
健吾も、理子に吊られるように、空を観る。
そして、健吾は小声で話した。
「なぁ。ダブルデート出来るといいな。」
「毎日、そんな感じだったわよ。」
「まぁ。そうだけどな。」
二人は、笑った。
忠君が、起き上がる。
一点を見ている忠君が気になり、
理子と健吾がその視線を追う。
理子と健吾の座っている真後ろに
堂々と建っている別荘。
別荘の中の電気が点いている。
カーテンの色から、
オレンジ色の電気が点いたのが分かる。
理子と健吾が、不安な表情を見合わせた。
「俺、優潤に電話するよ。」
「あ。うん。」
理子の手から、健吾の手が離れた。
ポケットから、携帯を出す。
カチャカチャカチャ……。