カタチのないセカイの為に
窓の前に居た優潤が、
美咲の方へ向かってくる。
彼は、何故か笑顔だった。
「高科が、置いていってくれた、
薬箱があって、良かったな。」
「うん。」
高梨さん。優潤と一緒に住んでいる人。
メインの電気は、取り外されている。
壁際に照明と、天井にある、幾つかのポイント照明で、部屋は、明るい。
美咲の前に座ると、
左手首にシップを貼って、包帯を巻いている。
続いて、消毒液で傷の消毒をする。
手際の良さに、美咲は驚いた。
そして、起用だ…。
何故か、凄く静かな部屋だ。
虫の声が聴こえる。
エアコンを入れてくれたからかも知れない。
サラッとして、何か気持ちいい。
「僕も、昔、
さっきの石積みから落っこちたんだよ。」
優潤は、頭の中で、
『美咲に助けてもらったけどね。』と続けた。
「そうなの?」
美咲が聞く。
「うん。」
バンソウコウを貼りながら、優潤が応える。
「出来たよ。」
優潤が、傷の手当てが終わった事を伝える。